★S-P表とは・・・?
1974年にアメリカの学会で佐藤隆博博士が発表したS−P表分析法は、学習指導の節目に実施するテストやドリルの学習結果のデータから、生徒の学習と先生が作った問題や先生が行った授業や指導との関わりを捕らえて分析し、生徒の学習の内容や先生の指導法の診断、評価情報を得ようとするものです。
S−P表分析法は、教師が学習診断や評価を行う際に、成績順位や得点結果からは診ることが出来ない生徒の育成のポイント、指導の改善のポイントを教師が判断することが出来るというテストの結果の分析方法です。
単に平均点や偏差値を計算して学習評価を行うのでは、生徒一人一人の育成のポイ
ントは見えてきません。
一つ一つの問題に対する正誤情報から生徒一人一人の学習課題を見つけ出し、一人一人の生徒の育成に向けた情報を作り出すのがS−P表分析法なのです。
★S-P表のつくり方
東京学芸大学 岸研究室より
あるテストにおいて、個々のテスト問題と生徒の解答パターンから悪問や注意を要する生徒を見つけ出す表です。 S-P表の分析は珍しいことに、小難しい計算式は出てきません。並べ替えを行うだけです。
では具体例を使って手順と分析の仕方を見ていきましょう。

これはあるクラスで行ったテストの結果です。
人数は20人、問題数は10問です。 1は正答、0は誤答を表します。
このままでは何がなんだかわかりませんね。 そこで、成績の良い生徒の順番に並べ替えます。 Excelでは、データ→並べ替え→最優先されるキー“得点” を行います。
並べ替えたのが次の表になります。

上から成績の良い順に並べ替えが完了しました。 次に、正答数の多かった問題順に、左から並べます。
ただし、Excel君はお馬鹿なので、一発で横の並べ替えをすることはできません。
そこで、コピー→形式を選択して貼り付け→行列を入れ替える、をすると、縦横が入れ替わりますので、そのデータを先ほどのように並べ替えてください。 そうすると、次のような表になるでしょう。

縦と横が入れ替わってますね? そしたら、面倒ですがもう一度縦横を入れ替えて、縦軸に生徒、横軸に問題にします。

この表は何を意味しているのでしょうか?
成績の順に上下に並べ替えたのですから、上に行くほど成績が良いことを示し、 正答数の順に左右に並べ替えたのですから、左に行くほど正答数が多いことを示します。
ということは、左上に「1」(正答)が集中し、
右下に「0」(誤答)が集中します。

では、いよいよ分析に入ります。 S曲線とP曲線を引きます。
S曲線の引き方は次の通りです。 個々の生徒の成績のぶんだけ、左から右へ数えたところに縦線を引きます。 この例では、12番の生徒は10点です。ですので、左から10数えたところに縦線を引きます。赤の円1です。 17番の生徒は8点ですから、左から右へ7数えたところ、つまり赤の円2に縦線を引きます。 そうして線を結んでいくとS曲線が完成します。 次の図では赤で表されています。

次にP曲線を引きます。 P曲線の引き方は次の通りです。 個々の問題の正答数のぶんだけ、上から下へ数えたところに横線を引きます。 Q1の正答数は18ですので、上から18番目に横線を引きます。 青の円1です。 Q5の正答数は15ですので、青の円2に横線を引きます。 そうして線を結んでいくと、P曲線が完成します。 次の図では青で表されています。

こんな感じでS・P曲線が引けました。 SとP曲線は、接近するのが普通ですが、著しく離れている場合は、 @指導の不十分 Aテストの内容的妥当性が低い Bテスト項目の配置や順番が適切ではない C採点基準の不明確 などの原因が考えられます。
ではこれからこのS-P表の見方に入りましょう。

確認しますが、S曲線の意味に着目すると、S-P表は理論的(理想的)には
S曲線より左は1のみ S曲線より右は0のみ
になるはずです。
しかし現実は、これとは異なっています。 理想的な状態と現実の状態のズレが、分析のポイントとなります。
同じように、P曲線の意味に着目すると、S-P表は理論的(理想的)には
P曲線より上は1のみ P曲線より下は0のみ
になるはずです。

もとのS-P表に戻ります。
まず深緑の円から説明しましょう。 赤いS曲線と、この11番の生徒の正答パターンを見てください。 理論的にはS曲線の左側には1(=正答)が集中します。
しかしこの生徒は、左側に正答が一つもなくて右側にしか正答がありません。
端的に言えば、この生徒は易しい問題ができず、難しい問題しかできていません。 このことから、11番の生徒には学習上でなんらかの問題があることが示唆されます。
次に黄緑の円を説明しましょう。 青いP曲線と、このQ3の正答パターンを見てください。 理論的にはP曲線の上側には1(=正答)が集中します。
しかしこの問題では、上側の正答数よりも下側の正答数が上回っています。
端的に言えば、得点が高い生徒はこの問題を間違え、得点が低い生徒はこの問題に正答しているということです。 このことから、Q3の問題は不適切な問題であった可能性が示唆されます。
他にも多くの示唆をS-P表は与えてくれます。
S-P表の左上にある0(=誤答)は、単なる勘違いであることが多い(成績の良い生徒が簡単な問題を間違えている)ので、矯正が比較的容易です。 しかし右下にある0(=誤答)は、内容が理解されていないことに起因する(成績の悪い生徒が難しい問題を解けない)ので、きちんとした指導が必要です。
また、S曲線の右側の占める面積、またはP曲線の上側の占める面積は、そのまま平均正答率となります。
この例の場合、ぱっと見てS曲線はセル全体を二分しているようですので、平均正答率は50パーセント程度でしょう(実際、50パーセントです)。
S曲線の形から、大体の得点分布を知ることも可能です。この例の場合は、S曲線の中央部が垂直に近くなっています。 このことから、縦長の正規分布をなしていることが予想されます(実際、このデータの平均値は5、中央値は5、SDは1.86です)。
S曲線のSは、StudentのSです。よって、S曲線に着目すれば、個々の生徒の達成水準や学習状況がわかります。 P曲線のPは、ProblemのPです。よって、P曲線に着目すれば、個々の問題の良・不良がわかります。
S-P表の活用として、他に注意係数というものがあります。 生徒の注意係数CSと、問題の注意係数CPがありますが、これらの数値から生徒の学習状態や問題の良否の目安がわかります。 注意係数の詳しい説明は、まだ製作中です。
最後に、S-P表の弱点を一つだけ。
S-P表の分析は、計算式をほとんど使いません。見た目が非常に重要な分析なのです。 ということは、データが多すぎると分析がどんどん困難になります。これが弱点でしょう。 しかしながら、だいたいクラス単位での分析がほとんどですから、そこまで不便を感じることはないと思います。
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