観点別評価の見直しについての提言
1 はじめに
新学習指導要領の完全実施3年目を迎え、改訂の主旨が各学校、各教師に浸透してきた。移行期に見られた不安や焦りは影を潜め、新しい体制の中でいかに独自性のある教育を行っていくかということに興味が移りつつある。
しかし、一見定着したかに見られる今こそ、改訂の主旨が真に活かされているかを検証し、必要があれば軌道修正する必要があるのではないだろうか。特に評価という観点からは、指導と評価の一体化や評価の多角化が確実に行われているかを確認することが大切である。
2 観点別評価のあり方
観点別評価が採用されたのは、定期テスト等に偏りがちな評価を指導の中で行われる評価に重点を移すことと、より多角的に個々の生徒を理解するという主旨からである。また、自ら学ぶ意欲・変化に主体的に対応できる能力、個のよさと可能性を重視しようという評価観の転換も求められた。
したがって、我々教師は日々の授業では常にこれらを意識して指導し、生徒に対しても直接的・間接的にこれらを理解させなければならない。
さて、実際の評価においては、指導のねらいに合った評価を行うのは言うまでもない。例えばコミュニケーション活動を行う際には、何のためにその活動を行うのかを明らかにした上で、評価項目を決めることになる。そして、最終的に通知表等で生徒にフィードバックする際には、妥当性・信頼性のある評価とする。もちろん、そこに教育的配慮が入ることも少なくないであろうが、少なくとも評価の理由を問われたときに窮しないよう客観的データを蓄積しておきたい。
3 観点別評価の実態
(1) 評価する側の問題
附属中という立場上、多くの先生方の実践を見せていただいたり、評価に関する率直なお声を聞くことがある。概して言えることは、ほとんどの先生方が試行錯誤の上に何とか実態に合った適切な評価法を確立しているということである。しかし、次のような実態があることも確かで、改めて評価のあり方を真剣に考える必要がある。
@ 毎時間授業中に事細かに全員の記録をつけているチェックマンと化し、指導が おろそかである。意欲は買うが本末転倒。
A 学期末の段階でその時の印象点で観点別評価をつけている客観性をできるだけ高めなければならない評価として失格。
B 観点別評価を点数化して評定をつけている多角的に生徒を評価しようという改訂のねらいから逸れ、以前に逆戻り。
(2) 評価される側の認識の問題
評価に対する教師側の理解に対して、評価される側は本音では理解していないという実態がある。特に進路問題が関わると、結局は評定や観点別評価のAの合計数を問題にして内容面には目がいかない。これまでの常識を覆すようなものであるから仕方がないが、我々教師側も努力不足である。ことあるごとに理解を求めていく必要がある。
4 観点別評価見直しの視点
(1) 指導・評価計画の見直し
相当な時間と労力を傾けて作成した指導・評価計画であっても、実際に指導してみると実態にそぐわないということは多い。そこで、改めて計画を作成し直さなければならない。
@ 指導のための評価に生徒の発達を手助けできるような評価を工夫し、適宜フィードバックを。
A 指導と評価のねらいを明確に欲張りすぎず、焦点がぼけないよう重点を決めて評価できるように。
B 評価の基準を明確に誰が評価しても評価の揺れが最小限になるような具体的な基準を。
C 評価方法を簡単に細かすぎず、できる範囲で実施を。簡単で長続きする方法を。
(2) 評価場面の見直し
@ コミュニケーション活動の評価
授業中に行われているコミュニケーション活動を、態度面はともかく、コミュニケーション能力の育成という面から見ると、活動の成果を観点別評価にどう活かすか悩むことが多い。そこで、個々の活動の評価と観点別評価との関係を明らかにし、一方が満足であればもう一方も上達したことになるというような関連性を持たせたい。
A 定期テストの観点別化
観点別評価の登場により悪者扱いされている定期テストであるが、次のように構成すれば観点別評価の重要な資料になる。
・実際に指導した内容にしぼる。
・問題を観点別に整理して出題する。(指導要領の4つの「観点別」ではない。)
・返却時に観点別の達成度を知らせる。
・結果を生徒に自己分析させる。
本校では上記のように定期テストを行っており、生徒は自分の課題点を意識できるようになっている。また、すべての観点別の得点をパソコンにインプットしてあり、統計処理をして指導の弱点を探せるようにしてある。

5 終わりに
今回は「観点別評価」の見直しに論をしぼり、紙面の都合で具体的な評価方法は省略した。評価の詳細は、北尾倫彦・長瀬壮一編「観点別学習状況の評価基準表」(図書文化)を参照されることをお勧めする。
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